0011 中央 アタル (42/142)
単純に怖えな。
前は車のフロントガラスから映画みたいな感覚でゼンイチと戦っている様子を見ていたが、闇の中の犬は、異様な不気味さを感じさせる。
俺は頭の中で、ズシオウマルがどんな動きで俺たちに襲いかかってくるか、シュミレートしていた。
アパートの間取りは1DK。
玄関から5Mほど真っ直ぐな通路が伸び、ズシオウマルの後ろに7畳前後の部屋が広がっている。
アパートの玄関の幅はおよそ1500(mm)もない。
成人の俺が両手を広げて、余裕で手のひらが壁に着く。
そのまま力まかせによじ登れるくらいだ。
ズシオウマルが飛びかかってくるにも、通路は真っ直ぐ。
サルでも軌道は読める。
俺が警戒して懐中電灯を構え、片手に持つカバンを強く握る。
飛びかかってきたら、このカバンでハタキ落とす。
反面、今日はスーツを着てくるんじゃなかったとか、スーツが汚れないか心配していた。
「ちっ ちっ」
突然、俺の斜め後ろに立つ足立シヲリがその場にしゃがみ込み、犬を招く仕草で、ズシオウマルを誘っていた。
鳥じゃねえんだから。
そんな手が通用したら、首輪がこの世から無くなるだろ。