0011 中央 アタル (41/142)
足立シヲリは薄暗い中でもハッキリと分かるほどうなずき、懐中電灯を受け取った。
足立シヲリに懐中電灯を渡した直後。
クシャ
クシャ
薄暗い部屋と沈黙の中、紙クズを踏むような音が聞こえた。
俺より先に、足立シヲリが玄関の先に懐中電灯の光を向ける。
「ハッ ハッ」
動物独特の小刻みな呼吸音と共に、動物がゆっくりとこちらに近付いていた。
犬がいると分かっていても、俺は真っ先に 動物 と認識した。
「いた」
足立シヲリの言葉で、名前と以前見たシルエットを思い出す。
薄汚れた、グレイに近い白い毛並み。
頭は俺の腰くらいの位置だが、立ち上がれば胸まで届く大きさ。
俺は犬種には詳しくないが、大きめの秋田犬のような見た目。
玄関の先にいるのは間違いない。
ズシオウマルだ。
玄関にいる俺たちから、数歩先でズシオウマルは立ち止まった。
暗闇の先で、光に照らされた瞳をこちらに向けている。
唸(うな)っている訳でも、威嚇(いかく)している様子もない。
決して目付きが悪い訳ではない。
だが、何を考えているか分からない。