0003 杉並 ルシエ (11/32)

読んでみると、どうやら奴隷自身の『本能』的なものや『生理』的なものまでは操れないようだ。


そういえば、何かの本に書いてあった。催眠術は、嫌いな食べ物は食べさせることはできるが、自殺させることはできないらしい。それは人間が本来持つ生存本能により、ストップがかかるそうだ。


ふと疑問に思ったのは『人を殺す命令』はできるのだろうか?それについては、説明書には書いていなかった。


まあ、仮に万が一あいつらを奴隷にできても、自殺させたり人殺しをさせるのは、あたしの目的じゃないから、あまりこだわらない。


ていうか、SCMを付けた者同士でしか奴隷にできないなんて、こんな物を付けた人間に、そうそう出会えるのだろうか?


せめて2つ買えば良かった。


あ。


「ふふ」


あたしは自分の思考で、不意に笑う。


この説明書はいい。


SCMを付けた者ではないと奴隷にできないというのが、あたしの至福の妄想に引っかかるが、読んでいると本当に人を奴隷にできる気になれる。


説明書を読みながら、時々 目を瞑り、鼻から息を吸って、あいつらを具体的に苦しめることを考える。


あいつらのアソコに熱したお湯をかけたり、思いっきり踏んで、タバコの火を消すみたいにネジったり。1枚1枚爪を剥がしたり、親にも土下座させたり、身体も家族も社会性も、大切なものすらぶっ壊してさあ。


「うっ くく」


たまらない。


読んでる間だけ、読んでる間だけ、夢中に浸れるんだ。