0011 中央 アタル (38/142)
このアパートは古かったし、南京錠でもかけていない限り簡単にポストの郵便物は取れそうだが。
「でも変なんすよね」
「変?」
「表札の名字が目黒ってなんてるんですよ」
「めぐろ?」
おかしいな。
「部屋に間違はないはずだ」
「じゃあ前の家の住人ですかね」
そう祈る。
とにかく実際に鍵があるなら好都合だ。
俺はそっと、ガムテープをカバンにしまう。
目黒という表札への疑問より、なんだか無性に恥ずかしい気分だ。
それにしてもこの女、意外に使えるな。
足立シヲリは、強く握った鍵をそっとドアノブに差し込む。
カ チャ
かなりゆっくり回したが、気持ちのいい開放音で、ゼンイチの部屋のドアが開いた。
カギは合っていた。
彼女がゆっくりとドアを開け、開いた隙間の手前に俺が立つ。
何も打ち合わせていないが、自然に俺が足立シヲリの前にいた。
そっとドアの隙間を拡げていき、人が1人 入れるくらいまでドアを開ける。
俺と足立シヲリは自然に目を合わせた。
俺が先に入る。
そんな意思を込めて、俺は少しだけアゴでドアの先を差し、うなずいてみせた。
足立シヲリも、俺の合図にうなずく。
よし。