0011 中央 アタル (25/142)
やがて足立シヲリは、窓の外で流れるネオンの景色を見る。
外の光にのみ照らされた車内は暗く、静かに鳴るエンジン音と車が走行する音だけになった。
彼女でもなんでも無い他人の女との、重い気持ちでさばく仕事のようなドライブだ。
クールに見られる(はずの)俺だが、こういう空気は嫌いなんだよな。
「あの犬が心配か?」
気を使ったつもりは無いが、俺から足立シヲリに話しかけてみた。
足立シヲリは窓の外を見ながら答える。
「一応 恩人っつうか恩犬なんで」
おんけん。
「グッぬ」
なぜかツボに入って、笑いそうになった。
しかしグッとこらえる。
足立シヲリは不思議そうに一瞬こちらを見たようだが、くしゃみか何かだと思っただろう。
あぶねえ!
こんな訳の分からないタイミングで笑う訳にはいかない!
俺は奴隷になっても、クールに働くお兄さんキャラを貫き通さなければいかんのだ。
年下の女子供に舐められる訳にはいかない。
ただ、この沈黙もいけない。
葬式のような緊張感で、笑いの沸点が低くなる。
今この緊張感で「ずばぼよーん」などと思い付きの言葉を叫んだ日には
「グっふ」
しまった。自分の脳内発言で笑いそうになってしまった。