0011 中央 アタル (4/142)
けど、そんな俺にも転機は訪れた。
22歳の夏。
幼馴染みの女が死んだ。
彼女は、親同士の付き合いで知り合った、ただの幼馴染みだった。
付き合っていた訳でもないし、好きだった訳でもない。
別にロマンチックな話でもなんでも無いんだ。
ただ、彼女は腐った俺を叱り続けてくれた存在だった。
面倒臭くて口うるさい、母親みたいな存在だったよ。
俺のおふくろの体が不自由だった為に、彼女は親切で男しかいない俺の家庭に、時々飯を作りに来てくれていた。
だが、当時の俺はわざわざ俺の部屋まで来て、俺を叱りに来る彼女を、心底ウザいと思っていた。
変わった奴だが、綺麗な女だった。
この年になって色んな女を見てきて初めて、彼女がどれだけ珍しい女かよく分かったよ。
だがそんな彼女は、22歳の若さで死んだ。
しばらく見ないと思っていたら、入院していたんだ。
知らなかった。
死因は膵臓(すいぞう)ガン。詳しいことは知らないが、最終的には肺や胃にも転移していたそうだ。