0011 中央 アタル (5/142)
抗がん剤による治療なども薦められたそうだが、彼女はそれを拒否した。
最後は安らかな顔で逝ったと、彼女の親から聞いたよ。
葬儀は親族だけの密葬で行われ、俺は彼女の死に目も、死に顔も会えず終いだった。
まあ人並みに泣いたし後悔したねえ。
それからの俺はさらに腐った。
馴染みの女が死んでも、俺は何も変わらなかった。
死んだのは彼女なのに、俺は自分が悲劇の主人公にでもなったつもりで、やさぐれていた部分もある。
そんな空気や関係でも無かったはずなのに、彼女は実は俺のことが好きだったんじゃないかという妄想で、勝手に泣いたりもした。
そんな自分が嫌になっても変わらなかった。
イタイもんだ。
今思えば、彼女はチャキチャキ動く性格だったから心配とかよりも、単にぐうたらな俺を見てイライラして怒っていただけかもしれない。
死んだ後では、彼女の気持ちは分からない。
なのに死んだ人間の存在や意思は、美化される。
良くも悪くも、彼女は死んだ後も俺の中で、俺を叱り続けてくれた。
それでも腐って腐って、腐り果てて4年も使った。
だがようやく、26歳の時に、俺は動いたんだ。