0010 文京 ゼンイチ (87/90)

「ああ すまん ゼンイチくん」


夜道の電灯に、男のメガネが反射する。


男の後ろの方に、さっきこいつが乗っていた車が見えた。


「でもまさか犬と勝負が成立したなんてビックリだねえ どういう経緯で勝負になったの?」


男の質問に、俺は勝負の始まりを思い出す。


「やんのかコラって言って 犬が吠えたらSCMが鳴ったんだよ」


俺は珍しく素直に答えた。このメガネなら、いい答えが返ってくるんじゃねえかって、一瞬思った。



「へえ SCMはやっぱり 審判 がいるのかもな」



しんぱん?



俺が何も言わないでいると、メガネは続ける。



「審判 ジャッジだよジャッジ 勝負開始や決着を判断するジャッジメントがいるって話だ」



「んなもん どこにいんだよ」


俺は思わず、その場を見渡した。


犬にメガネの男。メガネの後ろに、知らない女とオカマとシヲリが乗った車。


目黒ん時も、ルシエん時もシヲリん時も、ズシオウマルの時も。


俺達以外に誰もいなかった。



「俺達の会話を聞いているかも知れないだろ コレで」



メガネは自分の口の中を指差した。



SCMだ。やっぱりこいつも着けてんだ。