0010 文京 ゼンイチ (85/90)
くそ、首の周りが寒い。血が冷えてきた。
俺が車に近付こうとすると、犬がそれを食い止めてくる。
さっきから、その繰り返しだ。この状況、いつまで続くんだ。
「のっ野郎!」
ヅガン
俺はやっとたどり着いた車を、思い切り殴りつけた。
車内の連中が俺を見たが、相変わらず車から出てくる様子が無い。
「ガア!」
車に気を取られていると、俺の背中に犬が乗って来やがった。
「くそ!」
そこから俺は、無意識の内に車から離れる様に、犬とやり合っていた。
俺のパンチは、もうさっきまでの威力が無いのは分かっている。
『 カチャン 』
犬との勝負中に、俺のSCMから聞いた事の無い音が出た。
一瞬は決着の合図かと思ったが、俺はまだ犬に対して反抗はできる。
じゃあ、この音は何だとか、そんな事を意識して考える余裕も無かった。
訳分からない疑問と体を動かし続けた疲れの中、テンションMAXで向かって来るでけえ犬。
犬が走って俺に向かってくる姿が、妙にスローに見える。
「ああ もう」
俺は思わず呟いた。
「勘弁してくれ」
『 カチッ カチカチ 』
SCMから、音が鳴った。