0010 文京 ゼンイチ (84/90)
突然、オカマが勢いよく車から降りて、シヲリの元まで走って来やがった。
「てめえ!」
俺の叫びに、オカマは一瞬ビクッとして止まる。
「ガア!」
直後に犬が俺の首に噛み付いた。
「ぐぞ!」
勢いでそのまま倒れちまった。
俺は犬を体から引き離そうするが、至近距離の俺のパンチは大して効いていない上に、犬は離れない。
「が!あ゙!」
無理に離そうとしたら、首の肉を持っていかれる勢いだ。
横目で、オカマがシヲリを抱え上げる姿が映る。
オカマはそのまま、車にシヲリを連れて行きやがった。
オカマがシヲリを車に連れて行ったのを確認すると、やっと犬は俺から離れた。
「あ゙あ゙ くそ」
間違いねえ。
この犬、シヲリを助ける為だけに行動してやがる。
こいつ、ただの犬じゃねえ。
俺は車に近付こうとしたが、相変わらず向かってくる犬を相手にするしかない。
「返ぜ!女を返せ!」
「ガアッ!」
「シヲリ!戻れ!命令だ!戻れ!」
俺が叫んでも、車内のシヲリからは何の反応も無い。
車の中に音が届かないのか。