0010 文京 ゼンイチ (83/90)

車の中の連中は出てくる様子が無い。


つうかあのオカマ、仲間を連れて来やがったんだ。


「グルル!」


ちくしょう。


考えようにも、目の前の犬の相手で一杯一杯だ。


すでに、手のひらや足を噛みつかれた。


俺の攻撃はほとんど当たらず、犬は俺の顔や首を狙っている。


「あ゙あ はあ」


マジ疲れた。息が上がってきた。


パンチや蹴りが当たらない勝負を始めてから5分強。


犬は相変わらずの素早い動きで、俺に噛み付いては離れる動作を繰り返している。


「くそ!」


俺の蹴りはことごとく当たらない。


ズシオウマルとか言ったか。


こいつに勝つビジョンが浮かばねえ。


奴は唸り声をあげ、勢い良くジャンプしては俺の首をめがけて牙をむく。


しかも気が付けば、俺とシヲリの距離が遠くなっていた。


犬が邪魔で、シヲリの近くに寄れないんだ。


なんなんだこいつ。妙に計算した動きをしやがる。


「あ゙あ゙ くそ」


自分でも、自分の動きが鈍くなっているのが分かる。