0010 文京 ゼンイチ (82/90)
暗い住宅街の夜道。
電灯に照らされた俺は、でけえ犬と戦っていた。
犬の攻撃はヒットアンドアウェイって感じで、俺に大した傷を作らないが、さっきから俺の攻撃は全然当たっていない。
「はあ はあ」
ちくしょう。マジ疲れてきた。
勝負が始まって3分くらいか。
俺たちの近くに、眩しい光と、エンジン音が近付いて来た。
車だ。人だ。
頼むから、この犬を轢き殺してくれ。
俺はまぶしいライトの先の車内を見る。
前の座席に見える人の姿は、男。
そして、後部座席には身を乗り出してこちらを見る、あのオカマがいた。
もう1人、後部座席に女が乗っているが、よく見えない。
俺が車側を見ていた隙に、犬が俺の顔の目前まで来ていた。
そのルートに手応えを感じ、俺は反射的に足へ力を込める。
「ギャッン!」
俺の蹴りは見事に犬に命中した。
犬は車の近くに着地し、直後に俺に立ち向かう。
また蹴りを入れようとしたり、拳で犬を払おうとするが、うまく当たらなかった。