0010 文京 ゼンイチ (81/90)

疑問を抱く余裕も無く、犬はまた俺に向かって来た。


蹴り上げようとしたが、今度は素早く横に避ける。



「ズシオウマル?」



電信柱で座っていた、シヲリの小声が聞こえた。


なんだこの犬。シヲリの犬か?


「お前の犬か!?どうにかしろ!」


「いや あの」


戸惑った様子で、シヲリは俺を見る。


なんだよ、違うのか?なんでもいいから、どうにかしろ。


「ズシオウマル 止めて」


足立シヲリが犬に向かって名前を呼んだが、犬は相変わらず俺に唸る。


「お座り ハウス」


シヲリが訳の分からない事を言っても、犬は俺しか見ていない。


こんなサイズの犬、戦ったことねえし、独特の迫力があった。


デカイ日本犬って感じだが、本気のテンションで唸って向かってきやがる。


単純に怖え。


シヲリも驚いた様子でこちらを見ているが、相変わらず電信柱の根元でグッタリしていた。


ズシオウマルとかいう犬は、シヲリには手を出して来ない。


あくまで俺を狙って来やがる。