0010 文京 ゼンイチ (40/90)
「 勝負は」
何も言わなくなった女を、もう1度ひっぱたこうと腕を上げると。
「勝負は 泣いたらまけ」
ルシエはついに勝負を言った。っつうか申し込んだ。
『カチッ』
直後に口の中のSCMが鳴った。これこれ。これが勝負開始の合図だよな。
ルシエの閉じた口からも、わずかに機械音が聞こえた気がした。
「へへ」
俺は杉並ルシエに馬乗りになったまま、ベルトをカチャチャと緩めた。
勝負は泣いたら負け。
俺のビッグマグナム大先生で、ヒイヒイ鳴かせてやるよ。あ、泣かせるか。
耳元に自分の顔を寄せる。髪からはシャンプーの匂いと、女独特の匂いが混ざった匂いがした。なんかたまんねえ。
「いただきまーす」
俺がそう言った瞬間。
『カチッ カチカチ』
SCMがまた鳴った。
「は?」
何だ?何が起きた?
顔を上げてルシエを見ると。
ルシエの目が、テカテカと光って濡れている。
ルシエはすでに泣いていた。