0010 文京 ゼンイチ (30/90)

目黒はまた小声で「すみません」と言って、コンポの電源を切った。


同時に、目黒の携帯のヴァイブが鳴った。ゴソゴソとポケットから携帯を取り出す目黒。


「杉並ルシエです」


ディスプレイを見て目黒はそう言った。


「出るな」


俺がそう言うと、ヴァイブったままの携帯をポケットにしまう。


電話に出させないことに、特に意味は無い。話して変にボロが出るよりいいかと思っただけだ。


しばらく携帯のヴァイブ音が響いたが、車内はまた車が道路を滑走するゴオオという音だけになる。近いとはいえ、沈黙も退屈だな。


「つうかさあ 奴隷ってどんな気分?やっぱ今すぐにでもご主人様の靴舐めたいとかそんな感じ?」


「いえ仕事に似てます」


なんかキッパリ答えたな。


「は?仕事ってどういう意味だ?」


「仕事で上司に命令を受ける感覚を もっと強くした感じです」


「ふーん」


昔やってたビデオ屋のバイトで、ムカつく店長をぶん殴った時の事を、なぜか思い出した。


「つうことはさあ 俺みたいに上司に対して反抗的なアウトローだったら 奴隷になっても反抗できんじゃね?」