0009 中野 タイジュ (53/65)

俺は隣に座るジュリアを見た。


「気付いた?」


ジュリアの後ろの鏡張りの壁で、俺が頭に着けていたウィッグが外されている事が分かった。


「まさかオカマだとは思わなかった」


中央はソファーで腕を組み、俺に顔を合わせないでそう言った。


男だと、バレた。


改めて正面から見る中央はジャケットを脱いで、ネクタイも外していた。


白いワイシャツだからか、体がデカく見えるし迫力はあるが包容的な魅力すら感じる。


俺は直後にアゴに痛みを感じ、口の中が切れて血の味がする事に気付いた。


そうだ。俺は中央にぶん殴られて気を失ったんだ。


「違う オカマじゃない」


思う事はたくさんあったが、俺は中央にまずそう言った。


「痛むか?」


俺の言葉に中央は、自分のアゴを触る仕草を見せ、俺に痛みの具合を聞いてきた。


「すごく痛い」


俺が真顔でそう返すと、中央はわずかに笑う。


「悪かったが まあ俺の意思じゃない事は分かってくれ」


俺の意思じゃない?分かるかっつうの。