0009 中野 タイジュ (45/65)

ゼンイチはこちらを気にしている様子だが、相変わらず向かってくるズシオウマルを相手にするしかない。


よく見れば、首の周りが血だらけだ。


ざまあみろ。


こちらに向かって何か叫んでいるが、いい感じにほとんど聞こえない。


仮にシヲリさんに命令していても、シヲリさんにはゼンイチの姿を見せないし、その声は届かないんだ。


セダンの後部座席に3人では狭いが、俺はシヲリさんを車に引き入れることに成功した。


「あ あだちゃしゃん」


俺は今頃になって震えが止まらない。


噛みまくる俺の言葉を、シヲリさんは微笑んで見てくれた。


ジュリアはバッグからウェットティッシュを取り出して、シヲリさんの顔に付いた血を拭いてくれている。


「この人達は?」


力無い顔で、シヲリさんは俺に尋ねる。


「助っ人です」


シヲリさんはジュリアに顔を拭いてもらいながら、車内を見回した。


「そう ありがとう」


この場では言えないけど、信用できない連中だ。


「君 あの男に他の者と勝負をするなと言われたか?」


「いえ まだ何も」


中央の質問に、シヲリさんは目だけを中央に向けて答えた。


「そうか」


良かった。


シヲリさんはまだ、ゼンイチから他の者と勝負をするなと命令されていない。