0009 中野 タイジュ (44/65)
中央の懸念で、俺の中の何かが吹っ切れた。
もう考えるとか、懸念はうんざりだ。
シヲリさんがゼンイチに他のSCMとの勝負禁止命令が出ていても
シヲリさんは目の前にいるんだ。
俺は勢いよく車から降りて、シヲリさんの元まで走った。
すぐにゼンイチが俺に気づく。
「てめえ!」
一瞬ビクッとして体が動けなくなる。
近くで見るゼンイチは、デカくて向こう側の景色が見えなくなる。
やっぱ、こいつ怖え。
「ガア!」
直後にゼンイチの首に、ズシオウマルが噛み付いた。
「ぐぞ!」
ズシオウマルの勢いに、その場にゼンイチが倒れる。
ゼンイチがズシオウマルの体を引きはなそうとするが、なかなか離れない。
その隙に、俺はシヲリさんを抱え上げる事ができた。
「中野ちゃん?」
久しぶりに聞くシヲリさんの声に、俺は泣きそうになった。
「はい」
血とよだれまみれで体には力が無い様子だが、意識はちゃんとある。
俺はそのまますぐに、後部座席にシヲリさんを座らせ、自身も車に入った。