0009 中野 タイジュ (40/65)

「あの犬 めちゃくちゃ強いな」


中央のつぶやきの通り、ゼンイチと犬はほぼ互角に戦っていた。


普通に考えたら、犬よりゼンイチのように好戦的で体の大きな人間の方が強く感じるが、この景色を見ていれば犬の先祖は狼で、狼は自分の体より大きな動物を狩っていた事がよく理解できる。


ゼンイチの攻撃はほとんど当たらず、ズシオウマルの牙はゼンイチの顔や首を狙っていた。


ズシオウマルとゼンイチの戦いを目の当たりにして、目の前の景色しか考えられずにいたが、次第に状況から感じとった事も考えるようになる。



経緯は謎だが、ズシオウマルとゼンイチは、今SCMの勝負を始めてる。



そして1度勝負が始まったら、他のSCMの干渉はできない。


ジュリアも中央もそれに気付いて、対応に悩んでいる。


今はただ見ているしかできないでいる。


「ちくしょう」


俺は小声でくやしい気持ちをつぶやいた。



見事に、俺とジュリアの取引が無駄になったんだ。



こちらも、1度勝負を始めたら降りられない。


シヲリさんが無事ならいいと思っていたが、予想できない展開の連続に、俺は不安と疑問で動けない。


どうしたらいい、この状況は今からどうなるんだ。