0009 中野 タイジュ (39/65)
ふいに、また犬の姿が車のライトに照らされる。
俺はゼンイチが戦っている犬に見覚えがあった。
「ズシオウマル」
俺のつぶやきに、ジュリアが振り向く。
「あの犬 知ってるの?」
「いや あたしも首輪を見ただけで この辺にいた迷子犬です」
俺の返答を聞くと、ジュリアはまたフロントガラスからズシオウマルとゼンイチの戦いを見た。
周りには飼い主らしき人間はいない。
「あのズシオウマルとかいう 犬」
中央は眼鏡の位置を整えながらつぶやく。
「SCMを付けてるのか」
中央の言う通り、緑反応のSCMを付けていたのはズシオウマルしか考えられない。
けど犬が自分でSCMを付ける訳なんてない。
誰か人間が付けたんだ。
けど犬にSCMを付けるなんて、誰が何の為にやるんだ。
「ギャッン!」
フロントガラスから、犬を蹴り上げるゼンイチの姿が見える。
犬は俺達が乗る車の近くに着地し、直後にゼンイチに立ち向かう。
ゼンイチもまた蹴りを入れようとしたり、拳で犬を払おうとするが、うまく当たらず、ズシオウマルに手のひらや足を噛みつかれている。