0002 渋谷 サチ (12/18)

──それからウチは仕事を上がり、朝方にザコ、その男の家にいた。


メアドと番号を交換し、彼の指定した彼の家に来たんだ。


多分七畳くらいの1K。ウチの部屋より遥かに狭い。部屋はわりとキレイやけど、灰皿には大量の吸い殻。


男の名前は港 タキオ20歳。自分とタメだった。


さっきからタバコを吸いながら、ずっと本を読んでいる。本というか、説明書?


携帯電話を買った時に付いてくる、ぶ厚い説明書みたいな。


ウチは布団からタキオの様子を見ていた。裸で。


3発うたれた。


この部屋寒い。あたしはせめて下着だけでもと思って、パンツを探した。


「まだ着るな」


タキオの言葉に、ウチは布団に戻り、謝る。


「ごめんなさい」


自分なりになんとなく分かってる。


ウチはこの人に逆らえん。


どう例えたらいいんだろ。


小さい頃、ものすごく怒っている父親の言うことを泣きながら聞いた。そんな恐怖でもあり。


バイト先ですごく尊敬していた店長。彼に指示されたことを、うまくこなしたいと思う緊張感。そんな尊敬でもあり。


愛しくて可愛いダメな彼氏の為に、何かしてあげたい。ウチがいなきゃいけん。そんな奉仕でもある。


今の感情はそのすべて。



うまく言えんけど、恐怖と尊敬と奉仕、さらに緊張。



そこから愛を抜く。