0002 渋谷 サチ (11/18)
やる気は無いが、真剣にやろうとした。
けど、こんな時にウチの手はフルフルと震える。
こんな細かい作業したの久しぶりだからだ。別に変なもんを鼻から吸引してるからやない。
ポチャ
あ。
1円玉が落ちた。
「あー」 「あー」
「ウチ やっちゃったあ」
まあいいじゃん。そろそろボーイに呼ばれる頃だろうし。
その後の空気はひどいもんだ。みんな適当だった。適当に相づちや、歓声をあげ、結局 最終的に勝ったのはザコ。
ザコはタバコ片手に、ウチを見る。
はいはい。ウチが負けまし
『 カチッカチカチ 』
口の中から、その音が鳴った瞬間。
ウチの心臓は高鳴り、ドクドクと騒ぐ。
呼吸を整えようとするが、乱れる。何かがウチの中で焦っている。
軽い嘔吐感に、焦りとか緊張の、さらにドギツイ感覚。何やの。
「やらして」
周りの雑音より鮮明に、ウチの耳に届いた言葉。
ウチは確かに「はい」と言った──。