0009 中野 タイジュ (26/65)
アラームと共に、約束より遅く、15分ほどでジュリアがビルから出てきた。
改めて近付いても、3段階のアラームが鳴るんだ。
だが10分の遅刻にも俺はイライラしていた。
この間にも、シヲリさんはゼンイチに何をされているか分からない。
しかも、ジュリアは携帯片手に、電話をしながら俺に近付いて来ていた。
何だよマジ。
敬語を使っている様子から、誰か目上の人間と話している様だ。
俺の前に立つと、電話はすぐに終わる。
「その子は救えるから」
電話を切ったジュリアの、一言目の言葉だった。
「悪いけど どうやってですか?」
俺の疑問に、ジュリアは携帯をイジりながら答える。
「今から助っ人が来るから その人がゼンイチという男をどうにかしてくれる」
助っ人?
「あなたの奴隷?」
ジュリアは一瞬俺の言葉に黙ると、携帯をイジるのを止めて俺を見た。
そして直後に『 キュイ──ン 』とSCMが鳴る。
「来た」
正確には、ジュリアは俺ではなく俺の後ろの駅のロータリーを見ていたんだ。
ロータリーには1台の車が近付いて来ていた。
続けて2回のアラームが鳴ると、黒塗りの高級車が俺達の目の前に止まる。
「乗ろう」
「え?」
ジュリアはツカツカとヒールを鳴らして車に向かい、後部座席のドアを開けた。
俺は明らかに一般人の匂いがしない高級車に、乗ることを躊躇(ちゅうちょ)していた。