0009 中野 タイジュ (12/65)
「俺の言葉を繰り返せ 勝負は殴り合いだ ほら」
無茶苦茶だ。
シヲリさんは勝ち気だけど普通の女の子だし、こいつ絶対に格闘技か何かやってる。
「勝負は なぐりあ い」
脅えて、うまく話せないシヲリさんがいた。
言い終わると、黒人はまたシヲリさんの顔を殴った。
ゴツ!
「カチって鳴った 始まったぞ」
あの黒人、SCMの勝負を無理矢理始めやがった。
ゴツ!
黒人がシヲリさんの頬を殴ると、固い骨を含む肉の音が聞こえる。
このままじゃ、シヲリさんが殺されちまうって本気で思った。
「ひゃめろおお!」
俺は叫んだが、首を踏まれているせいで、自分の声じゃないみたいなかすれた声が出る。
男は一瞬だけ俺を見たが、またシヲリさんに顔を向ける。
「負けを認めろ」
ゴツ!
シヲリさんの顔の左は、赤く腫れ上がり、口と鼻からはドクドクと泡が混じった血が出ていた。
「あ」
「あたしのま けれす」
泣き声で震える声だった。