0008 足立 シヲリ (48/55)
オデは犬を抱き、向きを変えさせて、あたし達に犬の首を見せた。
体を触られても、犬はおとなしく唐揚げを食べている。
「ほら」
「あ 本当だ」
毛に隠されて見えにくかったが、犬には細い首輪があった。
さらに、首輪にはアルファベットで名前が彫ってある。
中野ちゃんが目を細めて、アルファベットを読み上げた。
「ずし お う まる?」
「ズシオウマル?長いな」
オデがそう言って、首輪に触ろうとすると。
「ガルルル」
犬は唐揚げを食べるの止めて、オデに唸りだした。
「おわ こわ!悪かったよ!」
オデは犬から離れるが、レイバンは牙をむき出しにした犬の顔を見ていた。
「あれ?なんかこいつ 口ん中に金具みたいな物が 」
あたしも犬の口を覗こうとすると、犬はまた落ち着いた様子で唐揚げの最後の一口を食べ終わり、ヒョイっとあたしから離れる。
「目的は食べ物かよー やっぱ犬だなー」
レイバンの言うとおり、唐揚げを食べ終わったら、あたしから離れた。
けど、あたしはその犬の行動に、違和感を感じる。
普通の犬なら、さらに食べ物を求めるはずだ。
けどズシオウマルは、あたし達にこびる様子も無く、また夜道を歩き出す。
夜道を歩く犬の後ろ姿は、やけに寂しそうだが、人間並みの気高さや賢さすら感じた。
レイバンは食べ物が目的だって言ったけど、あの犬はまるで
「飼い主を探してるのかな?」
オデがそうつぶやいて、手をパンパンとはたく。
あたしもオデと同じことを考えていた。
ズシオウマル。
あの子の飼い主は、見つかるのかな。