0002 渋谷 サチ (5/18)

代表とは何度か体の関係がある。


それ以来、こういう急なシフトを頼まれることが増えた。


男は、一度寝た女は自分の女だと思う奴が多い。挙げ句言うことを聞くと思ってる。つくづくバカだ。


「予定立てたし 普通に嫌なんだけど」


ウチがそう言うと、代表はポケットマネーで報酬金を出すと言ってきた。どんだけ必死なんだ。


どうせ1万くらいだろうけど、暇だしいいか。ウチは電話をしながら、すでに準備をしていた。


家を出ると2月の外は寒い。


「はあ」


白い息を吐きながら、足早に歩く。もも引きはいておいてよかったあ。


電車の中でメイクして、電車から降り、駅から歩いて10分弱。


路面に面したウチが働く店に着いた。


「あ サチさんおはようございます」


店の中の源氏名も本名の渋谷サチ。昔は源氏名にこだわったりもしたけど、最終的にどうでも良くなった。


「おはよう」


店の入り口に立つボーイとあいさつをし、店の中の待機室に向かう。


足早に移動する中、店内の卓をチラッと見てみる。卓はほぼ全て埋まっていた。混みすぎっしょ。


待機に入りドレスに着替えると、店専属のヘア師に髪を盛ってもらうことになる。