0001 港 タキオ (18/19)
気が付くとグラスの紙には無事、3つ目の焦げた穴が空いていた。
「ああぶねー あぶねー!」
大げさにテンションを上げる友人。
「あぶないのはお前だ」って言ってやりたかったが、ジュリアたちと合わせて「あぁ」と残念そうな声を出した。
次の順番は、名前も知らない景色のキャバ嬢。いや、確かサチとか呼ばれてたな。サチは空気を読んでか、すでにスタンバイしたタバコを白い的に近づけていた。
そっと 白い紙にたどり着く赤くて熱い灰の部分。
多分みんな気付いていた。その女の手はフルフルと震えている事に。
そして、次の瞬間。
ポチャ
1円玉が、水に向かって落ちていった。
「あー!」「あー!」
もう誰が声を上げたかは分からないが、たぶん僕以外全員が声を大きくあげた。
「ウチ やっちゃったあ!」
女は大きく口を開け、僕たちに顔を向ける。
ああ お前はやっちまった。
僕の腹の下の黒い興奮と緊張は、一気に無くなっていた。