0001 港 タキオ (16/19)

ティッシュを張ったグラスをさらに準備し、皆タバコに火を付ける。


僕は一呼吸吸うと、タバコの火をゆっくり小太鼓の様なグラスの紙に近づけた。


音はしないが白い紙に ジワリ と黒いこげめがつく。


「穴が空くまでだよ」


ジュリアの声が聞こえたが、僕の視線はグラスから離れなかった。


穴は空いたが、灰も紙も落ちない。


それでも気を抜かず、タバコの火を紙から慎重に遠ざける。


「ふぅ」


肩から力が抜ける。思わず一服、そのタバコを吸った。


1円玉は動いていない。まずはセーフだ。


「あー」


僕のセーフにジュリアと景色のキャバ嬢が高い声を出す。


「よし!」


大声でそう言った友人。さっきまで嫌がっていた割には、テンションが高いじゃないか。男組と女組で手を組んだつもりだろうが、僕にとって全て敵だ。


次はジュリアの番。


濡れた唇でタバコをふかし、灰皿に余分な灰を落とすとグラスの紙に火を近づける。


ああ、ジュリアが吸うタバコのフィルターになりてえ。