J000 世田谷 ツバキ (132/135)
ゼロが去ってすぐ、フジコは救急車を呼び、救命措置を行った。
直前に、アンジュが気がつき、「アンジュの、救急車は呼ばないで」と言い出した。
衰弱こそしているが、断固として拒否をする様子に、一先ず中央の車で病院に運ぶことにした。
やがて来た救急隊によってタキオは病院に搬送され、僕と大田ユウガも車を出し、タクシーを含め全員が病院に同行した。
一歩先に救急車が病院に到着し、続けて我々がつく。車から降り、僕がICUの手前に差し掛かったとき。
『パキッ』という感触とともに、口のなかでSCMが崩れた。
「え?」
足立シヲリ、中野タイジュが互いの顔を見合わせた。
「今のって……シヲリさん感じました?」
「うん、なにこれ、どういうこと?」
なんか、ゼンイチと会ったあのときみたい。2人はそんな会話を続け、口からSCMを吐き出した。
その後ろで、北ミナミが練馬会長を見た。
「ジジイも感じたか?」
「……え?、なにが?」
「ジジイ、SCM外してたのか? つけてみろよ」
練馬会長が懐からSCMを取り出し、つけた瞬間。
「ん? なに今の」
そう言って、練馬会長は口から割れたSCMを吐き出した。入れ歯も一緒だった。
他の車に乗っていた杉並ルシエと目黒マサカズも、同様の体験をしていた。
院内で待っていたフジコも、不思議そうな顔をして、砕けたSCMを持っていた。
気になることは多々あったが、僕は病院を出る1台のタクシーも気になっていた。
そのタクシーは、さっき病院の敷地内に入ったばかりに見えたが、すぐにまた出たのだ。
乗っていたのは運転手と、後部座席に見えた一人分の、若い男のシルエットだった。