J000 世田谷 ツバキ (131/135)

僕の耳の後ろから、「無茶言わないでよ」とフジコの声がした。


対して、ゼロは「無茶をしろ、得意だろ」と返した。その言葉にフジコは何も言わなくなる。


その間もゼロはタキオを引きずり、出口付近までたどり着いていた。


手錠で繋がれているものの、タキオの身体ごと手繰り寄せ、右手でドアノブを回す。そしてタキオのポケットに手を入れた。


「……ずっと考えた」


タキオは「ころす」を連呼している。スラックスにまで血が染みわたり、おびただしい量の出血。彼はもう、虫の息だった。



「ゼロの幸せを」



妙な言葉だが、港タキオの背中を品川ゼロが離した。ゼロの手には、小さな鍵があった。



同時に、舌打ちが聞こえた。



「……けど、結局これだよ」



ナイフの柄は黒。黄色い暖光のなか、深緑の観葉植物に赤が飛び散った。



「あぁ! くっそ! 俺の、俺の!」



ゼロが扉から出て行くなか、タキオは膝を着き、扉を睨みつける。



「俺の! テメーは俺の!」



そして、我々奴隷たちを睨みつけた。



「俺の、21人のォォ奴隷ぇなのによォ!」



どこかで、自身の崩壊を予感しているようなその言葉を吐くと、タキオが白目を向いた。