J000 世田谷 ツバキ (128/135)

周りにいる皆がアンジュに駆け寄ろうとするなか、タキオがそれを退け、叫んだ。


「フジコ! おいフジコ! どうにかしろ!」


ストライプのパンツスーツを穿いた女性が、すぐにアンジュの下へしゃがみ込んだ。花嫁の瞳孔を確認し、脈を計る。


「……尋常じゃないほど衰弱している。病院に連れて行ったほうがいい、痛ッ」


火の消えたキャンドルソードが、フジコの額に投げられた。


「んだよ畜生! 初夜だっつうのによ! 本当なのか!? どうにかしろ!」


「本当よ……それに、これは私個人の勘だけど、この子、何かを我慢してぃる……」


我慢? 不意に、フジコが言葉を切ったように思えた。


フジコは震える手でアンジュの腹を触っていたが、タキオの視線に、それを避けた。


タキオは気づいていないようだが、僕は一時的にでもフジコと行動をともにしたから分かる。


こんなにも冷静さを失った彼女を、初めて見た。


フジコも、必死で何かに抗っているように思えたのだ。



泡を吹き、突然倒れたアンジュ。



フジコはアンジュの腹を触った。守るように……?



……まさか。



いや、ありえない! SCMの効力は絶対だ!