J000 世田谷 ツバキ (124/135)
「あんたがやらかして、なんかシャレんなんなくなってきちゃって、みんなアホみたいにSCMに執着してさ。何がよくて、何が悪いのかも分からなくなった。レアなおもちゃ集めて自慢するみたいに、みんな奴隷の数とかステータスを求めて。理解はできても、気持ちは分かりたくなかった。分かったら、そっちに行ったっきり、帰れなくなると思った」
荒川エイアは、大田ユウガに視線を合わせた。
「でも、せめてあんたには思い出して欲しかった。保険になってくれって。もしものとき、助けてくれって、あたしを求めてくれて。キラキラした瞳でさ、楽しそうに、SCMの話してきた、あんときみたいに。どっか共感して、似た者同士だねって、勝手に馴れ合ってた。あとはさっき言った通りだよ」
彼女は顔を伏せ、悲しそうに続けた。
「無邪気で、刺激的で、たまらなく魅力的でクレバーな大田ユウガを、思い出して欲しかった。あたしは、そんなあんたが……」
彼女は何かを言いかけて、そこで止めた。そして前髪を耳にかけた。
「……まあいいや。あたしには策も何もない。あんたが練馬会長んとこに突撃して、重傷を負ったって聞いて、結果的に、失敗しちゃったし」
大田ユウガは悲しそうに微笑み、切れた唇で言った。
「君も……失敗するんだね」
「……もう、期待しないでよあたしに。もういいよ。探偵ごっこはお終いでしょ。あたしだって、普通だし。もうあんまり考えたくない」
「……ごめん、エイア」
消え入りそうな大田ユウガの謝罪を最後に、2人の会話が終わった。