J000 世田谷 ツバキ (121/135)

「もう、どうしようもないの?」


そう言ったのは顔に包帯を巻いた女性だった。不気味だが、包帯の理由は何とも訊きにくい。千代田マリヤ、と僕はタキオから聞いていた。


「蓄電は可能ですが、SCMの内部電池には限りがあります。そして、SCMの本当の力は充電切れの先にあります」


「どういうこと?」


「やがて、必要なくなるんですよ」


「え?」


目黒を覗いて、その場にいる誰もが僕を見た。


「連続稼動はおよそ4300時間。用途や環境により前後はしますが、S・Mモードになった瞬間からカウントが始まります。そしてSCMは、いわば補助輪。奴隷として植えつけられた者は色濃くその人生を反映される」


荒川エイアは、組んだ腕を解き、僕を見つめた。


「解放が……できなくなるってこと?」


次に、豊島アヤカが言った。


「あたし達、このままだと一生、奴隷なの?」


助けがなければ、「……そういうことになります」


皆、目を見開き互いを見つめる。リュウオウと大田ユウガは、どこか予想していたのか、自分のつま先を見つめていた。ある程度SCMの検証をしていた分、より諦めに近い感情を抱いているように思えた。


「痛ッ!」


僕の頭に、石鹸が飛んできた。


「なんて物、作ってくれたんだよ!」


投げたのは、中野タイジュだった。彼は煌めくグレイのスーツに、今はネクタイを解き、はだけたドレスシャツを着ている。