J000 世田谷 ツバキ (120/135)
「あんただって、似たようなもんやろ」
渋谷サチの嫌味に、スーツ姿の大田ユウガが言った。
「……エイアを責めないであげてくれ」
「何でさ」
ユウガは立ち上がり、荒川エイアの隣に立った。
「彼女が今までしてきたことは、全部、僕らのためなんだ」
大田ユウガの告白に、荒川エイアが「……いいよ、今さら」と口を挟む。しかし、彼は構わずに語った。
「エイアは、みんなからSCMを遠ざけようとしたんだ。恐怖を植えつけるために、自らヒール役を買って」
白のギャザースカートを穿いたミナミくんが、ユウガを見た。
「本当かよ、それ。にしてもやり過ぎだろ」
「まあやり過ぎに見えたかもしれないけど、そうでもしなきゃみんなSCMに魅了されていた。誰よりも、この僕も。そうだろ? エイア」
彼女は何も言わなかったが、否定もしなかった。
ユウガは瞳の奥にか細い芯を宿し、最後に言った。
「エイアは……優しいんだ」
「そう……そうだったの」
練馬ヨシムネの呟き。
だが、荒川エイアの目論見も、今は無駄に終わった。
皮肉にも、そのヒール役は港タキオが引き継いだ。そして彼の行動は役ではない、本当の欲望。
荒川エイアの言葉を借りると、愚かな人間の所業だ。
誰もがうな垂れ、諦めるなか、渋谷サチは納得のできない様子で荒川エイアを睨みつけていた。
「うちは、あんたがやったこと、忘れんし」
渋谷サチの手の平には、〝E〟という英字が刻まれていた。彼女はそれを強く握る。
エイアは無表情のまま言った。
「ちなみにそれ、運気が上昇するように刻んだから」
「え? そうなん?」
紅髪の女は、まつ毛をぱちぱちとさせて手の平の傷を見た。
聞いたことはないが、 本当ならラッキーでも起きて欲しいものだ。