J000 世田谷 ツバキ (113/135)
これが……これは、本当に起こっていることなのか……?
世の中に、これほど残虐なことができる奴が、本当にいたのか?
本で読んだ奴隷の歴史よりも凄惨で、そしてさりげなく時間が過ぎ、バットは少年の頬の形を何度も変えた。
僕はなんて、ちっぽけでちんけな存在だったのだろう。僕は、ラスボスになりきれなかった。タキオを見ていると、そう思えた。
僕のした悪事など可愛かった。いや、直接手を下す勇気なんて、僕にはなかった。
SCMで救いたかったのは、封建社会を彷彿させたのは。
すべて僕が、僕に与えようとした必然だったんだ。
暗い背景に、真っ直ぐなのに禍々しく見える杉の木々。闇の地面、顔を背ける2人の男女。涙を流す女。
バットを持つ青年に、今にも折れ曲がってしまいそうな少年の小さな背中。
やがて景色が暗いセピア色に映る。一瞬一瞬が過去になる。『自分だけは大丈夫』という、正常化の偏見はとうに過ぎ去った。
無音で無機質で無慈悲な光景が僕の視界に広がり、自分でも何を言っているのかわからないが、すべてが人形劇のように見えた。
初めて体験した。現実から逃避するように、人は残酷すぎる実際の映像を、屈折して脳に認識させることがあるんだ。