J000 世田谷 ツバキ (109/135)
「知るかよ。テメー製作者だろ」
左手から右手へ。タキオがバットを持ち替えた。
「審判だったら、どーにかできんだ、っろ!」
テンションの下がる痛みが、何度も押し寄せる。肉から骨を伝い、腰にまで痛みの根が枝分かれする。
「ち、違う! 僕は審判じゃない!」
「んー?」
「本当の審判は、本人! 宿主なんだ!」
審判を判断するのは人間の脳!
「だから、曖昧な勝負でも成立するんだ! 人間の認識がすべて判断しているんだ! SCMはその判断力を借りて作用しているに過ぎない!」
持ってる言葉で、活路を探した。タキオのバットが止まった。
「ジャッジはSCMじゃなくて、俺たち……負けたと思ったら、ってやつか」
「だから、む、無理なんだ! 僕にも! 本当は僕が作ったんじゃないんだ!」
「っるせーな! じゃあ、SCMなしでも俺に服従を誓えよ! ほら言えよ! 僕はあなたの奴隷です! 僕は人生の敗北者です! あなた様のカカトの角質が食べたいですってさ!」
「ヒッ!」
痛みの意味を脳が思考する、なんて余裕もない。もういっそ……いっそ。何のために僕は我慢を。もういっそ。熱い涙が目頭に溜まる。
もういッ……ツ。痛ッ。痛ッ。
腫れた腿に手を伸ばせば、拳を潰される。引っ込めれば痛みに衝撃が重なる。
地獄。拷問。浮かぶ言葉の先は、無意識に出たものだった。
「……食べたいです」
その瞬間、生きている限り、人の性は痛みの奴隷となることを知った。
「ん?」
「ぼ、僕は人生の敗北者です! かくしつが食べたいです!」
『カチッ、カチカチ』