J000 世田谷 ツバキ (97/135)
「火をつけやがった。あいつ」
直後、練馬会長が窓の外を見た。
「窓から出ても同様です」
品川ゼロの言葉とともに、窓の外の景色から炎が見えた。
この部屋は1階。窓は2つ。いずれの窓も出た瞬間塀によって阻まれ、表へ出るには外壁をグルリと半周し、人1人が通れる幅を通るしかない。
その活路もすでに火を撒かれ、絶たれたか。
暗い部屋の勝負に、火を多様したのがいけなかった。火は注目を集める。僕たちが勝負に夢中の間、品川ゼロは出口に細工を施し、扉を開けたままにした。
僕の横で、中央アタルが言った。
「品川ゼロ、何故ここにいる?」
彼は悲しげな瞳で中央アタルを見た。端末タブレットを持っていた。
ゼロはタブレットの画面が見えるよう、僕たち全員にそれを掲げた。
「日本人の平均生涯年収を知っているか?」
タブレットからそんな声がした。
映し出された1人の男。背景にシートが見えた、車内から中継しているようだ。
「タキオ……!」
渋谷サチが首を抑えながら、男の名を呼んだ。