J000 世田谷 ツバキ (96/135)
窓を見ると妙に明るい。明かりが揺れているように見える。
腕時計を見れば23時。ましてや雨。そんなはずはない。
「ウソだろ……火だ」
「火事だ」
小雨とはいえ火に囲まれている。灯油でもばら撒いたか。意図的な炎であることは明らか。
室内がザワめいた。「あっ」真っ先に渋谷サチが出口へ向かった。
扉はすでに開いている。おかしい、さっきまで閉まっていた。
「待って!」
荒川エイアの声。
「う、あっ!」
直後、渋谷サチが悲鳴を上げ、その場に倒れた。
扉を出ようとしたとき、まるで透明の壁にぶつかったように倒れたのだ。
すぐに分かった。透明のテグスが張られている。
「サチ!」
荒川エイアが彼女に駆け寄った。
渋谷サチは首を抑え、「ゲホゲホ」と咳き込んでいた。
葛飾アンジュはリュウオウの前に立つ。
出口の先に、一人の男が立っていた。男は渋谷サチを見下ろし、言った。
「……ごめんね」
フジコは彼の姿を見つめる。
「品川ゼロ……」
侵入者は、品川ゼロだった。