J000 世田谷 ツバキ (94/135)
リュウオウはミナミくんに視線を移した。
「奴隷になった際に鳴る、カチカチ。あれだよ」
「いや、あれって言われても分かんねーし」
ミナミがそう返すなか、荒川エイアの瞳にリュウオウが映った。
「鳴らせるだけ、ってこと?」
リュウオウが満足そうにエイアを見る。
「そう。奥歯に仕込んだJとかいう機能は、恐らく勝負の音と、勝負終了の音。両方を鳴らせる、だけの機械だ」
「要は条件反射による暗示ってことか」
確かに僕が開発したJは『カチッ』と鳴る勝負の開始音と『カチッ カチカチ』と鳴る判定音を〝任意で操れる〟という機能が追加されただけの機能。それがジャッジメント機能の本性、パブロフの犬。
墨田教授の作ったSCMのブラックボックス。その貞操帯により、僕は彼の研究をレイプしきれなかった。
呆気らかんとした様子で、ミナミくんが言った。
「あの音を聞いて、勘違いしてみんな奴隷になる……それってつまりさ、ハッタリで相手に敗北感を与えて奴隷にする、ていう反則技だよな?」
孫の正解に、練馬会長もアゴを触る。
「敗北感の条件反射……奴隷になった人間に効くとは、そういうことか」
ふんっ。確かにその通りだ。