J000 世田谷 ツバキ (84/135)
ほう、また無茶な。
ガラス製のコップを触れずに割れ、と。
リュウオウはコップを掲げたまま続けた。
「勝負が開始した瞬間から、触れることを一切禁ずる。もちろん投げてもダメ、他の人に頼んでもダメ。この空間内で行い、禁止事項で割った場合は即失格」
同じ品が部屋のあちらこちらに転がっている。
集めれば3つぐらい揃う。
このガラス製のコップが勝利へのチケット。
僕は杉並ルシエを見た。彼女を推したいところだが、彼女には無理だろう。フジコも働かせ過ぎた。
中央アタルでも使いたい。が、僕自身が最もこの勝負に適任だ。
多少のリスクはある、が。ここですべてを決めたい。
「では、僕の派閥からは僕が」
僕は一歩、前に出た。
荒川エイア派閥を見ると、バケツを持った女が前に出た。
「じゃあ、あたしがいく」
荒川エイアも、主人本人の出場か。
「いやエイア、僕に行かせてくれ」
彼女の肩にそっと手を触れたのは、大田ユウガだった。
荒川エイアが彼の顔を覗きこむ。
「できるの? あんたに」
「エイア、もういいんだ。君の心はもうギリギリだ」
「……何言ってんの急に」
ユウガの謎の言葉に、エイアの目がヒクリ、と細くなった。