J000 世田谷 ツバキ (61/135)

地面で息を荒げる犬に、フジコの視線が落ちる。


「2割だったかしら? 血を抜いたときの致死量は。犬の場合」


フジコは吐息でも吹きかけるような声色で、ズシオウマルにそう囁いた。


だが、それはもちろんデタラメ。


ズシオウマルの傷口からは、既に血が垂れ、地面に広がり始めている。


「もうそろそろ、それぐらい血を垂れ流したかしらねえ?」


満身創痍のズシオウマルの頭上で、真っ白な死神が微笑んだ。


エイアとフジコの腕は、未だきっ抗している。


「デタラメ言ってないで、離せ」


「話してるじゃない」


悪ふざけを言うフジコの顔面に、エイアが唾を吐いた。


「離せえぇぇ!!」


「オオオン」


不意に、ズシが悲しげに泣いた。


人は絶望で死ぬ。


犬も絶望で死ぬのか。



「……えいはあ」



「え? 今」



妙な声に、辺りにいる全員が互いの顔を見合わせた。