J000 世田谷 ツバキ (58/135)

ズシの前足は宙をかき、脱出を試みるが、それもアーデルハイトの更なる万力で叶わない。


「そのまま。そのままでいいわ、アーデルハイト。いい子ね」


彼女の牙から血が伝う。が、その血は舌によって登った。消えた。


「もしかして……舐めてるの?」


足立シヲリの呟きに、中野タイジュは言った。


「としか思えないっすね」


「ヤダ、怖い……」


豊島アヤカだったか。彼女のつぶやきに、新宿セイヤの舌打ちが聞こえた。


エイアがフジコを睨んだ。


「勝負はついた。やめさせて」


「ついてない。血は垂れていない」


「こちらの負けでいい。やめさせて」


「オンッ!」


エイアの声に、ズシが吠えた。


「でも、当の本人はまだ諦めていないみたいね」