J000 世田谷 ツバキ (55/135)

「リングの外に……道連れにする気だ!」


そのとき、アーデルハイトの身がナッツのように丸まった。


そして──。


「──っがああああ!」


ゼンイチの悲鳴が轟いた。


「あっ、鼻もってかれた……」


アーデルハイトがゼンイチの鼻を前足で裂いた。


再び、ボタボタと血が地面へ垂れる。


はずみで、ゼンイチの握力が緩み、アーデルハイトは解放された。


「リュウオウ、あの分からず屋を大人しくさせなさい。さもないと失格よ」


「僕に命令するな。ルールを勝手に決めるな」


フジコの指摘に、リュウオウは終始、ゼンイチのやらかしを静観していた。


「男の子でしょ? 紳士を学びなさいな。フェアに、公平に、潔く」


練馬さんの説教に、リュウオウは息を吸い込む。


「見れば分かるだろ。もう終わった」


ゼンイチはさきほどの命令に従い、リングの外に出ていた。


「……タイジュ、シヲリ。ゼンイチを手当てしてやれ」


リュウオウの命令に、細身の2人が近寄るなか、ゼンイチは未だ鼻息荒く、アーデルハイトを睨みつけていた。


とはいえ、これでゼンイチが正式に失格となった。