J000 世田谷 ツバキ (54/135)

そのはずみで、数滴の血が地面へ飛び散った。


「あ、血が……」


「どっちのだ!?」


それは耳から迸(ほとばし)る血だった。


そして、地面には真新しい物体が落ちていた。


「み……み? あれ耳?」


「……ゼンイチの耳だ」


アーデルハイトは、ゼンイチの耳を食いちぎっていた。


その血は垂れ、辺りの街灯によって光沢を放っている。


「文京ゼンイチ、失格。動けるうちに外に出るよう、命令して」


フジコの指示に、リュウオウがゼンイチを見た。



「ゼンイチ、出ろ。お前は負けた」



「はあ、ああああ! グゾ! 耳! 俺の!」


「ギャウッ!」


ゼンイチは自身の耳を拾い上げ、アーデルハイトの後ろ足を掴んだ。


「なにやってんの!」


「成層圏までぶっ飛ばしてやる!」


「ダバウッ!」


腹いせか、ゼンイチはアーデルハイトを引きずり、腕に力を込めていた。