J000 世田谷 ツバキ (52/135)
「バックッ! アーデルハイト!」
フジコの命令にアーデルハイトは一瞬、動きを止める。
それがいけなかった。
「バフッ、ガア!」
「捕まえたぜ、この化け物がっ!」
ゼンイチがアーデルハイトの首をチョークスイーパーした。
「今さらだけど……ゼンイチ、滅茶苦茶すね」
中野タイジュの声とともに、フジコの舌打ちが聞こえた。
隣に立つ中央アタルの唇が、ニヤリと曲がった気がした。
「バウッ! バッ! ガアア!」
アーデルハイトは雄叫びを上げ、ゼンイチに牙を向ける。が、その牙はゼンイチに届かなかった。
「ハアッ! あー! 手こずらせやがってクソッ! 首の骨折ったて、勝ちになんねーんだよな。殺して血ぃ出すか、このウンコ犬!」
ゼンイチは首の血を犬の毛にこすりつけ、ニヤニヤと笑っていた。
「アオン! オン!」
「おーっと! 急かすなって。テメーはあとで俺様が自ら殺してやっからな、ハウスしてろ」
ん? ズシオウマルの吠えに、ゼンイチの、あの受け応え。
ゼンイチはズシオウマルの意思を、通常よりも深く察しているのか?