J000 世田谷 ツバキ (51/135)

「いや……」厳密には舐めた。


「ゴウ! アーデルハイトッ!」


決着を急ぐな、フジコ。


焼け石に水だが、ズシオウマルが敵であるゼンイチに塩を送った。


これで、ゼンイチは数秒間、まともに動ける。


「っらあ!」


「ガウアッ!」ゼンイチの蹴りが、アーデルハイトに重なった。


ズシオウマルを意識し、油断したか。


彼女は地面に降り立つと、再びコンクリートを爪で鳴らした。


「どーいうつもりだか、分かりきってるがよー!」


ゼンイチの擦れた声が辺りに響いた。


「こんなんで俺が言うこと聞くと思ったら、ビックバン勘違いだぞクソ犬ズシ!」


さらに向かってくるアーデルハイトに、ズシオウマルが真っ向から牙を見せた。


「オンッ!」


ズシオウマルにすれ違い様の体当たりを行い、アーデルハイトはその後ろに立つゼンイチへ駆けた。


まずい。


ゼンイチが、初めて両手を広げた。