J000 世田谷 ツバキ (50/135)
ふわふわの綿畑に紅い牡丹が咲いた。
ゼンイチの血は、固い地面に垂れなかった。
「ズシ……オウマル」
あのクソ犬、ズシオウマルが、その身体でゼンイチの血を受け止めたのだ。
「ぐうお!」
直後、ズシオウマルがゼンイチの首下に噛みついた、かに見えた。
「え? なにやってんだあの犬!」
「襲っちょる……」
「おっ! のっ! へ?」
ゼンイチの奇声に、皆の顔に疑問が浮かぶ。
ん? 今さりげなく訛った女の声が聞こえたな。
フジコが一瞬、向こう側にいる紅い髪の派手な女を睨んだ。エイア派閥の女か。
「優しすぎる。なにやってんの、ズシ」
エイアの声とともに、ズシオウマルが地面に立った。
彼の口の周りには、ベットリと血がついていた。
「飲んだんだ、ゼンイチの血を……」
汚らわしいと言わんばかりに、杉並ルシエが眉をしかめた。