J000 世田谷 ツバキ (45/135)

「ズシ!」


荒川エイアとズシオウマルのやりとりに、台東フジコが入ってきた。


「ねえ、荒川さん。貴女のほうが分かるでしょ? ズシオウマルが、貴女に言って欲しい言葉」


「ズシ……」


「オン! アオン! アオン!」


数秒の沈黙のあと、ズシオウマルの耳元で、荒川エイアの唇が動いた。


(……勝って、帰ってきなさい)


そう言われた瞬間、ズシオウマルは舌をしまい、尻尾をピンッと立たせた。


顔のパーツが中央に寄ったように見える。


その表情に武勇を抱き、ズシオウマルが前に出た。


台東フジコが微笑んだ。


「決まりね。ルールの追加を提案するわ。対戦者以外は車より前に出ないこと」


各車は、ちょうど円形を模って停まっている。


つまりは、その内側、ここがリング。


対戦者以外は、それぞれが乗ってきた車の後ろへ掃けていった。


一回戦、ブアメードの血。


荒川派閥は忠犬ズシオウマル。


リュウオウ派閥は自称サラブレット、文京ゼンイチ。


そして僕の派閥からは、フジコの従犬、アーデルハイト。