J000 世田谷 ツバキ (44/135)

台東フジコが「シット」と言った瞬間、アーデルハイトはお座りをした。


「言ってなかったかしら? 私の父は警視監なの。訓練を受けた彼女を、事情があってうちで引き取った。どっかのワンコよりも賢いわよ」


練馬ヨシムネが親指でアゴをなぞる。


「フジコちゃんの……犬、しかもメスなのね」


「オン! アオン!」


どっかのワンコが吼えるなか、アーデルハイトは耳をピンと立たせ、唸っている。


白い体に黒目のズシオウマルに対し、アーデルハイトは混沌を思わせる茶色に黄金の瞳だった。


「ぐっぞ! っの野朗!」


「野朗じゃないわ。彼女があたしの代わり」


台東フジコは彼女の頭を撫でながら、文京ゼンイチを見下ろした。


僕は自分の車を指差し、こう言った。


「苦労しましたよ。アーデルハイトは、フジコさんの実家から運んできた新たな仲間です」


対ズシオウマル用のね。


「アオン! オンッ!」


荒川エイアに制止されながらも、ズシオウマルはうらめしそうに唸っている。


「ダメだよズシ……あんたじゃあいつに勝てない、あたしが行く」