J000 世田谷 ツバキ (39/135)
「手段は何でも構わない……けど、そうね、刃物なんかを使うのはつまらないから、五体のみ、丸腰で戦ってもらう」
荒川エイアの目下がヒクリと動いた。
フジコのルールのままでいくと、おのずと各派閥の適任者は絞られる。
「……ダメだよ、ズシ」
「アオン!」
前に進もうとしたズシオウマルを、荒川エイアがとめた。
彼女は飼い犬の心情を察知し、事前にとめたか。
ズシオウマル。昔から人間の言葉を異常に理解している節があった。
墨田教授の研究も、あの犬の存在のお陰で10年は早く進んだ。
それに、相変わらずの忠犬ぶりだね。
(ブアメードの血……犬も絶望で死ぬのかしら?)
フジコの小声が僕にだけ届いた。本質は〝それ〟か。
面白い。大変面白いですよ、フジコさん。
「アオン! オン!」
「ズシ? どうしたの? あのトランクに何かいるの?」
ズシオウマルはトランクへ向かって吼えている。
彼は気づいたようだね、自身と対を成す、彼女の存在に。